司法修習について考えてみる

10月に入り、朝晩は少し肌寒さを感じるようになってきました。

我々法曹三者(弁護士、裁判官、検察官)は、いずれも、司法試験に合格した後すぐに法曹になれるわけではなく、司法修習を受け、試験(通称「2回試験」)を合格してはじめて、法曹としての資格を得られます。
現在の司法修習の期間は約1年で、その間に、埼玉県にある司法研修所での座学と、裁判所、検察庁、弁護士事務所での実務修習を受けます。

私が司法修習をしたときの期間は1年4か月で、司法研修所で2か月の座学を受け、その後1年かけて実務修習をした後、司法研修所に戻り、更に2か月の座学を受けて2回試験に臨みました。現在の司法修習の期間は、私の時よりも4か月も短いということです。

それは、私の時とは受験制度が異なっていることが原因です。現在は、「基本的に」ロースクールに入学し、卒業した者のみが司法試験の受験資格を得るという制度となっており、我々が司法修習で学んだことの一部は、ロースクールで学んでいるという前提となっているためです。

しかし、実体は、ロースクールで学ぶことは、司法修習で学ぶことの先取りとはなっていないようです。そのため、司法修習で学ぶ期間がただ短くなってしまっただけ、という現状を招いているように思います。
今般、ロースクール制度の失敗は誰しもが認めるところとなったと考えますが、それと相まって、司法修習生の「質の低下」が招来されてしまったように思っています。

もちろん、現在も優秀な司法修習生はたくさんいると思いますし、私が最初に担当した司法修習生も、極めて優秀かつ熱心でした。

しかし、ちょうど昨日、司法修習のカリキュラムの一つを「失念していた」という理由で欠席し、弁護士会から厳しい指摘を受けたという司法修習生の話を聞きました。
私は開いた口が塞がりませんでした。

どのような気持ちで司法修習に臨もうと、それは本人の自由かもしれません。
私は、大学の同期がバリバリ仕事をしていっている中で、6年の司法浪人期間を経て、5回目の試験でようやく司法試験に受かった際には、少しでも早く、法曹としての知識や考え方や動きを知りたい、早く一人前になりたいと思って司法修習に臨みました。
大学でアメフトばかりしてろくすっぽ勉強しなかったことも相まって、司法修習期間は、一貫して真摯に取り組んだと自負しています。

法曹三者は、人の人生の一部を背負う仕事です。その覚悟がない者には、法曹の資格はないと思います。司法修習がなぜ必要であるのか、司法修習生には、そのことを真剣に考えて取り組んで欲しいと願ってやみません。