従業員は長く務めてくれるに越したことはないが

今年の2月14日に書いた記事(有期契約労働者の無期転換)の問題について、再度書きたいと思います。非正規雇用の問題です。

平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約について、同じ使用者との間での有期労働契約の期間が通算で5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより無期労働契約、つまり、期間の定めのない労働契約に転換します(労働契約法18条)。労働者の申込みによって承諾したものとみなされますので、使用者は拒否することができません。
これが適用される有期労働契約者は、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員等の名称如何にかかわりません。皆に適用されます。
したがって、早ければ平成30年4月1日をもって、無期転換権が発生することになります。

「平成25年4月1日以後に開始」というのは、そこからカウントするという意味で、平成25年4月1日以前から働いている労働者も含まれます。

これは、一見いいことのように思われるかもしれませんが、そうとも限らないのです。

無期契約に転換した後の労働条件は、「別段の定め」がない限り、それまでの労働条件が引き継がれます。このことの問題点は2つあります。

1つ目は、有期労働契約のときに昇給や賞与(ボーナス)について定めがないなど、正社員との労働条件と開きがある場合、長く務めるモチベーションを維持し難くなるということです。どれだけ頑張っても評価されないのであれば、やる気をなくすのが普通ですよね。

2つ目は、1つ目に関連しますが、有期労働契約には、通常、解雇に関する規定や休職に関する規定がありませんので、そのようにモチベーションをなくし、労働意欲を失った労働者についても、解雇させられないということになります。

つまり、ただ単に無期の労働契約に転換する、というだけでは、労働者、使用者双方にとって、必ずしもよい結果とならないのです。
上の2つの問題を解消するためには、無期契約に転換した後の就業規則をきちんと定めておき、労働者も労働意欲を維持し、使用者としても、やむを得ない場合には解雇できる根拠をしっかり持っておくことです。

従業員は長く務めてくれるに越したことはありません。でも、ただ単に長く務めてもらうだけではなく、従業員、使用者双方が同じ方向を向いていける基盤を作っておくことこそが、とても重要なのではないかと思います。