遺産を分けるということ

弁護士の仕事として、亡くなった方(被相続人といいます)の財産(遺産といいます)を分配する仕事があります。

関与の仕方はいくつかあり

①被相続人が亡くなる前に、遺産を相続人にどのように分配したいかを聴き取り、遺言書という形にする
②被相続人が亡くなった後、遺言書がある場合、相続人(民法で順位が決められています)、あるいは、遺言書に書かれた者(受遺者といいます)に遺言を執行する者として関わる
③被相続人が亡くなった後、遺言書がない場合、相続人の代理人として、遺産を分配する協議(遺産分割協議といいます)に関わる
④被相続人が亡くなった後、相続人がいない場合に、相続財産管理人という立場(家庭裁判所から選任されます)で遺産を分配する

というのが、主な関わり方かと思います。

①から③において、弁護士が常に念頭に置いておく必要があるのは、被相続人の最終意思をできる限り実現すること、だと思います。

①の遺言書を作成する際は、まさにそのことが前面に出ます。被相続人が亡くなるまさにその瞬間、自分が遺していく財産がどのように分配されて欲しいと願うのか、それを表明したものが、遺言書です。それは、被相続人の最終意思の表明です。

②の遺言を執行する際も、同様に、被相続人の最終意思が表明された遺言書に従って、遺産を分配することになります。

大事なのは、③の場合です。被相続人の最終意思が表明されている遺言書がないため、被相続人が、遺産がどのように分配されることを望んでいたか、客観的な拠り所はないことが多いです。そのため、依頼者である相続人から、被相続人が生前どのように話していたかなどを聴き取り、それも含めて相続にと話をして方針を立てていくことになります。もちろん、あくまで相続人の代理人ですので、依頼者の最大限の利益を実現することを追求しますが、根底に流れている被相続人の最終意思を尊重することは、事案全体のよりよい解決の観点からも大切なことであると思います。

④は特殊で、遺産を換価し(現金に換え)、債務があれば弁済し、残ったお金は国庫に帰すことになりますので、分配についての被相続人の意思が介在する余地はありません。

遺産を分けるのは、親族間で行われるのが通常ですので、それまでの道行きが色々あればあるほど、利害が対立し、激しく揉めることも多くあります。
しかし、少なくとも弁護士は、被相続人の最終意思の観点を常に念頭に置いておきたいなと思うのです。