小説「一瞬の風になれ」 ー 読書日記

「一瞬の風になれ」
「一瞬の風になれ」佐藤多佳子著

昨日の記事に書いた、小泉今日子さんの書評集で勧められていた本です。

サッカーエリートを兄に持ち、中学校までは兄を追いかけてサッカーをしていた主人公新二は、サッカーに挫折し、高校から陸上の短距離を始める。
同じ高校の陸上部に入った、幼なじみの連と新二は、お互いを高め合いながら競技者としても、人間としても成長していく。

累計100万部以上販売されて、漫画化もされ(漫画も読みました)、ドラマ化もされたものですので、多くの方がご存じの小説なのかもしれません。私は、小泉今日子さんの書評集を読んで初めて知りました。

大学まで体育会クラブに所属していた私は、子どもの頃からスポ魂ものには弱く、特に漫画は、「キャプテン」「プレイボール」「タッチ」「名門!第三野球部」「ドカベン」などの野球もの、今泉伸二先生の「空のキャンパス」「神様はサウスポー」、そして井上雄彦先生の「スラムダンク」などを手垢が付くまで読み込んだ人間です。

そんな私ですが、大学のクラブで自分に克てず、結果も出せずに終わり、スポーツをやっていて自分に克つということは、小説や漫画で描かれるような「きれいごと」ではないという思いを強くしました。そのため、真剣なスポーツの世界に対して、現実の世界でも、小説や漫画の世界でも、知らず知らず距離を置いていたように思います。
「一瞬の風になれ」は、そんな私が、何か忘れていたものを思い出したような、そんな気にさせてくれた小説でした。
何が私を惹きつけたのか、答えはまだ見つかっていません。私が取り組んだことがない、陸上の世界を描いたものだったからかもしれません。小泉今日子さんも書いておられますが、本は読むときどきで、捉え方が変わってきます。いずれまた手にとってみたいと思います。