事案の筋

先日,大先輩の税理士先生の誕生パーティーにご招待いただきました。
その場には,税理士はもちろんのこと映画監督や大学教授も来られ,様々なご経歴・ご職業の方といろいろなお話をさせていただき,大変勉強になりました。

その中で,ある税理士の先生が「法廷は論理の場所,税務は物語」という趣旨のことを仰いました。
税務については専門家のご認識状況に譲るとして,法廷は果たして論理の場所なのでしょうか。

一面ではそうでしょう。法的三段論法を用い,法に事実を当てはめ結論を導く訳ですから,それはまさしく論理の世界です。

しかし,「事案の筋」というものがあります。

裁判所も,その「事案の筋」に向かって論理を構築するという側面が多分にあります。
論理が結論を導くのではなく,結論が論理を導くということです。

それは,事案そのものが持っている力であって,如何に別の論理を構築しようと思ってもいかんともしがたいものがあります。我々はそれを「無理筋の主張」と言います。

「事案の筋」に反するご依頼者のお考えに対しては,説得して,納得していっていただくことも時には必要となることがあります。

ですので,如何に「事案の筋」を見誤らないかということが,我々弁護士の重要な能力の一つであると思っています。