宗教法人の規則について

京都といえば,神社さんやお寺さん,というイメージを持たれる方も多いと思います。
京都で弁護士をしていて,ありがたいことに,神社さんやお寺さんの事件を多数手がけさせていただいていますし,法律顧問もさせていただいています。

登録1年目に担当した,とても印象深いお寺さんの事件については,またの機会に述べるとして,今回は,「規則」に焦点を絞って述べたいと思います。

神社さんやお寺さんが宗教法人となるには,「規則」を定めている必要があります。ですので,既に宗教法人となっておられる神社さん、お寺さんには「規則」が存在しているはずですし,これから新たに宗教法人となろうとされている宗教団体は,「規則」を作成する必要があります。

「規則」に定めるべき内容は宗教法人法に規定されており,また,京都であれば所轄官庁である京都府庁がモデルを作成しているので,新たに「規則」を作成する場合はそれに従うことになります。
(各宗教団体の実態にマッチした修正は必要です。)

問題が生じるのは,京都の多くの神社さん,お寺さんがそうだと思いますが,今ある「規則」がとても古い時代のものでずっと変更されずに来ているという場合です。
この場合,現状の神社さん,お寺さんの状況と「規則」がマッチしていない,という状態になっている可能性があります。

例えば,現実に私が担当したあるお寺さんの事件では,「規則」で代表役員(宗教法人の代表者)は住職がなるとし,その住職は,「●●姓の男子」に限ると定めていました(●●は,そのお寺の住職さんの名字です)。
当該お寺さんでは,ある住職さんに娘さんしかおらず,養子も取らないままその住職さんが亡くなってしまいました。それにより「●●姓」の男子が存在しなくなってしまい,当該お寺さんの住職となり得る人がいなくなってしまいました。
結果,そのお寺さんは,宗教活動をやめざるを得なくなってしまい,信徒さんも離散していってしまいました。
それから現在で40年近くが経ち,お寺さんの建物は荒廃してしまっています。

宗教法人には「代務者」という制度がありますが,「代務者」は,通常,他の神社さんの宮司,お寺さんの住職を兼ねていますので,宮司や住職が欠けた神社さん,お寺さんで宗教活動を行うことは困難です。

お世話になっている神社さん,お寺さんで,宗教活動を行えなくなるということは,信徒さんにとっても大変心痛いことですし,当該神社さん,お寺さんが荒廃していってしまうとなれば,社会的な損失でもあります。

もし,上記私の担当した件で,「規則」の定めに,「●●姓」あるいは「男子」との記載がなかったら,状況は違っていたのではないかと思います。

もちろん,包括宗教法人(神社であれば神社本庁,お寺であれば本山)
の規則との関係で,規則を変更できない場合もありますので,その場合は,現状の方を動かさなければならないこともあります。

神社さん,お寺さんが,次の世代,更にその次の世代と安定した運営を継続していくためには,「規則」の定め方が極めて重要です。
その「規則」の定めは,法律に則っていることを前提に,現状にマッチさせ,かつ,永続性を持たせる必要があります。

私が法律顧問をさせていただいている神社さん,お寺さんでは,「規則」変更の御提案やこれから新たに宗教法人となるための「規則」の作成を
させていただいています。
「規則」の変更や法人化を御検討の神社さん,お寺さんは是非御相談下さい。