DB's PRIDE⑤

DB's PRIDE

前回「DB's PRIDE」が何であるかお話ししました。

では具体的に、「DB's PRIDE」はプレーでどのような形として表れるのでしょうか。

1つは、フルパシュートです。
「パシュート」とは、「追いかける」という意味で、フルパシュートとは、全力でボールキャリアーを追いかけることを言います。DBは、例え一度抜かれたとしても、また、プレーが自分と逆サイドであったとしても、ボールデッドになるかタッチダウンになるまで、全力で追いかけなければならない。DBが途中でプレーをやめるなどということはあり得ない。
僕はそのように教えられました。

絶対追いつけそうにないほどボールキャリアーと離れていても、躓いてスピードが緩まるかもしれない、その時にフルパシュートしていれば追いつくかもしれない、だからDBはフルパシュートするのだ、と言われました。

DBのフルパシュートで僕の記憶に残っているプレーがあります。京大ではなく立命館のDBで元野さんという方の、僕が2回生の1998年の甲子園ボウル法政大学との対戦でのプレーです。元野さんは僕と同じCBでした。
法政大学のRB(どなたかは忘れました)がディフェンスから見て左サイドを抜けて独走態勢に入りタッチダウンか、と思われたその時、反対サイドから元野さんが猛然とフルパシュートをして追いつき、タッチダウンを防いだのでした。
このプレーを見て僕は、やはりDBはフルパシュートしなければならないのだ、と確信するとともに、元野さんに憧れ、番号を27番から元野さんの番号であった34番にしました。

このようにフルパシュートが非常に重要だと思っていたため、僕は大学3回生頃まで、NFLを観るのが好きではありませんでした。NFLのDBは、フルパシュートせずに途中でプレーをやめる人が多いからです。また身体能力も違い過ぎるため、見ても参考にならん、と思っていました。今から思えば、参考になるところもたくさんあるので、もっと見ておけばよかったと後悔しているのですが。

そんなわけで、フルパシュートが「DB's PRIDE」の1つの表れなわけです。

もう1つは、セイブ・ザ・タッチダウンです。
セイブ・ザ・タッチダウンとは、ボールキャリアーがブロッカーを付けて抜けて来た、残るディフェンスは自分1人、というときに、一か八かタックルに行くのではなく、ブロッカーとボールキャリアーの頭をおさえながら下がり、スピードに乗せないようにさせ、後ろから他のディフェンスメンバーが追いついてくれるのを待つ、あるいは、サイドラインに追い込んだり、どちらかの方向にボールキャリアーを誘導して自らタックルする、というプレーです。
これも、DBはタッチダウンを防ぐ最後の砦であることを顕著に示すプレーです。
言葉で表現するのは難しく、分かりづらいですね。

セイブ・ザ・タッチダウンでも、僕の印象に残っているプレーがあります。これも京大のプレーではなく、同学年の関西学院のCB福田幸蔵くんのプレーです。対戦相手がどこだったかは覚えていませんが、抜けてきたボールキャリアーの方を向き、後ろ向きに下がりながら、確か左サイドに誘導し、サイドラインに押し出したのだったと思います。その時の、バックペダルからクロスに変わった彼のステップが美しく、目に焼き付いています。なお、バックペダルというのは後ろ走り、クロスというのは横走りというか欽ちゃん走りです。

そんなもう1つの「DB's PRIDE」の表れ、セイブ・ザ・タッチダウンについてでした。

次へ続く。