破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 - 読書日記

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語

実在するメガネ製造販売の小売りチェーンで、債務超過で経営破綻していた株式会社オンデーズを買収して筆頭株主となり、代表取締役にも就任して同社を再生させていった田中修治社長自らが執筆したフィクションです。

予約注文し、9月に入手して手元にありながら、本日ようやく読み終えることができました。

「フィクション」といいながら、上記のとおり、オンデーズも田中社長も実在しますし、他の登場人物も実在なのだと思われ、同業他社や金融機関で仮名の部分はありますが、ストーリーとしても、脚色は含みつつ、事実に即した内容なのだろうと推測しています。

内容は一言、「あり得ない」というものでした。

法律家としてはいささか稚拙な表現ではありますが、負債約14億円で、しかもそれが、設備投資などの一時的な需要のために発生したが経営自体は健全である、といった場合ならいざ知らず、そうではなく、経営自体の問題から負債が膨れあがっていったという状態であったようですので、まさに一から立て直さなければならず、問題は山積であったと思われます。

実に7年間もの間、金融機関からの新規の融資を受けられない状態で、その間、何度も資金ショートの危機が訪れ、しかもその額は数億に及んでいたとのことです。桁がいくつも違うのではないかという額です。

そのピンチを切り抜けられたのは「人」の力で、正に「企業は人」だなあと再認識させられました。
田中社長が示した方針に不眠不休で全力を注ぎ込む役員や従業員の方々、役員や従業員のために自らの身を賭して走り続ける田中社長、そんな田中社長を信用する取引先の方々。

私も、弁護士として企業などの再生に携わることがありますが、オンデーズのケースであれば、迷わず「民事再生手続」などの法的整理を検討したと思います。
しかし、「民事再生手続」は、金融機関や取引先に損失を及ぼすことと背中合わせであり、とりわけ、損失を及ぼすことになる取引先はそれ以降の取引をしてくれなくなるのが通常です。その他にも、リース物件を引き上げられるリスクがあったり、優秀な従業員が離れていく可能性があるなど、「民事再生手続」が上手く進行するためには、いくつものハードルを越える必要があります。そして、最終的に、債権者の多数(額・数)が再生計画に同意してくれなければ、会社は破産に向かうことになります。
更に、「民事再生手続」は、負債の大部分をカットするものですが、それであっても、経営者や従業員を精神的に追い詰めるものであり、手続を進行していくことは精神的にも重いものです。
そのため、「民事再生手続」を選択すべき場合というのは、限定的です。

オンデーズが、仮に法的整理の選択を取っていたら、現在のような会社の発展はなかったのだと思います。
この書籍を読む前から、オンデーズのことはSNSを通じて知っており、オンデーズでメガネを作りたいと思ってきましたものの、中々機会を得られずにきましたが、今年中には作りたいと思います。