少年事件の調査官

私が,弁護士登録以来,少年事件をライフワークと位置付けていることは以前書きました。

少年事件は非公開の手続きですので,どのように進行するかご存じない方が多いのではないかと思います。

逮捕されてから事件が裁判所に送られるまでの手続きは,大人と基本的に同じです。
裁判所に送られる段階から手続きが異なり,大人は地方(事件によっては簡易)裁判所に「起訴」されますが,少年は家庭裁判所に「送致」されます。
大人は「起訴状一本主義」といって,起訴時は起訴状しか裁判所に提出されませんが,少年は捜査記録一式がすべて送られます(この手続き上の問題点については,いつか書きたいと思います。)。

大人は起訴されてからは公判(裁判)期日を待つのみですが,少年の多くは少年鑑別所に入所し(観護措置といいます)心身の鑑別を受け,また,家庭裁判所に所属している「調査官」の調査を受けます。

少年が審判(裁判)を受けるまでに,少年鑑別所からの処遇意見と調査官の処遇意見が担当裁判官に提出され,裁判官はそれを見た上で,おおよそ結論を決めて審判(裁判)に臨みます。

結果,少年事件においては,否認事件でない限りは通常,審判(裁判)期日は一回開かれるだけで,審理終結後,すぐに結論が出されます。

裁判官は,審判(裁判)の席で初めて少年と話をしますので,少年鑑別所の意見と調査官の意見が極めて重要な位置を占めることになります。

我々弁護士は,上記の流れの中で,裁判官が心証を形成するまでに,意見書を提出し,裁判官と面談するなどして,自らの処遇意見に裁判官を引き寄せる必要があります。

調査官の中にも,良い調査官もおれば良くない調査官もいます。

少年の話に真摯に耳を傾け,少年の更生のために寄り添ってくれるのが
良い調査官ですが,色眼鏡で少年を見て,少年の問題点がどこにあり,それをどうしてあげればよいのかについて考えないのが良くない調査官です。

今回私が担当した少年事件では,調査官は少年院送致の処遇意見を出しましたが,少年鑑別所と私は保護観察(社会で普通に暮らす処分です)の意見を出しました。

少年によれば,当該調査官は,少年の調査の際,少年の内面の問題点や,それがいかに形成されるに至ったかと言ったことについて一切聞いていないということでした。調査の時間も,極めて短かったです。

結果は,無事,保護観察となりました。
裁判官が,きちんと少年の話に耳を傾けてくれる方でした。

裁判官の中には,調査官の意見を非常に重視する方もいますので,そのような裁判官であったら結論は異なったかもしれません。

少年の一生を左右する可能性がある手続きです。
どの調査官も,少年にきちんと向き合ってくれる方であることを切に願ってやみません。